彼は痛みなどどこにもありませーんという風情で、水筒の水をかけて、剣に付いた泥を洗っていた。

 初めて自分で買ったという短剣をお守り代わりにホルダーに納め、彼は長剣を腰に履く。

 あたしはぶるっと身震いして、ついこの間までいた小さな田舎町での出来事を思い出していた。

 小料理屋でグリフを巡ってオンナノコ達が大暴れ。

 その店はどことなしエレガントで、でも気取らないっていうのかな、こざっぱりして、とにかく良いムードだったの。

 お子さん連れも見たかな。

 それが……どういうわけか食事中、派手なお嬢さんが入口からずかずかと入ってきて、給仕のお姉さんを突き飛ばした。

「知ってるのよ! あんた、グリフの恋人気取りって言うじゃないの。このあたしを差し置いて」