「でも……本当のドラゴンなら、この塀の向こうでのんびりしててもいいはずよね。この国の王様なんだから。だよね? グリフ」

「え? あ、アップルなんか言った? 今そっちで物音が……って!」

 グリフが剣を抜いた。あたしは一気に緊張感がみなぎるのを感じた。

「ディノーディアさま。こんなところにいたのですか……ククク」

 どう見ても怪しいやつにしか見えない男がこちらへ一歩踏み出した。

「外界種の者か」

「ククク……傘下の者とでも言っておきましょうか」

外界種っていうのはこの地方の言い方で「人間」のことをさす。

 もちろん、あたし達の事も含めてそう言う。

 この特殊な地域では主に三つの種族が行き来している。

 竜と亜竜族と外界種。

 でね、最後のは珍しいんだってさ。