『拝啓 富美江様
まだまだ残暑の厳しい中 如何お過ごしでしょうか
私の心は既に冷たい秋風が身にしみております…』

「あのさあ 夕霧。隣にいるんだから 直接言えばいいじゃない。何わざわざ和紙と筆ペン使ってまでお手紙したためちゃってんのよ」

『それは話す気力もなくなる程 私が落胆しているからでございます…』

「だああっ!もうっ!!」
「ああっ!お止め下さいお代官様あ~!!」

富美江は夕霧から紙を取り上げ ビリッと破いた。

「なあにがお代官様よ全く。ちゃんと喋れるじゃない」

そう言って今度は筆ペンも取り上げた。

「ひどい ひどいわ!友人が苦しんでるっていうのにい!」

夕霧は手をぐーにして ぶんぶんと振って猛講義した。

「どんだけショックなのよ あのこと」

あのこと…。

そう あたしはこの夏休み明けの実力テストで 初めて三本の指からはずれた。
そして 代わりに三本の指どころか トップに立ったのは…

「頼道くんが あんなに賢いなんて思わなかったのね。まあ 転入してきたのが 期末テストの直後だったもんねえ」

富美江は腕組みをして言った。
顔にはうっすら笑みがこぼれている。