昇降口に着いて 下駄箱を開ける。

あらあ~ 今日もまた懲りずに…。

下駄箱から溢れ出る紙切れ達。

「うわあ~ 夕霞ちゃんモテモテやん」
「それがどうしてん」
「俺バレンタインでもこんなに貰ったことないで~」
「ホワイトデーにはこれの一年分やで…」

ああ もう 嫌になる…。毎日まいにち これを公園のゴミ箱に捨てる作業が どれだけめんどうやと思ってんの。

「やっぱ綺麗なこはモテるんやなあ~」
「迷惑なだけやって」
「うそやあ~ほんまは嬉しいくせにっ このっ 憎いねえ」
「ほんまうるさい」

いつもの公園のゴミ箱の前に立つ。

「えいっ」

「えっ…ちょ…」

いつものように私は紙切れ達を放り込む。

「な… ちょ なにしてんの」
「燃えるゴミをゴミ箱に入れてるだけやけど」
「そうやのうてっ。何で捨てんの。まだ読んでないやん」
「何でって 私は……… ん」
「なんやねんごまかすなや…」
「しーーっ!黙って…」

うちらがいる公園の噴水をはさんで反対側のベンチの並びに 隆史が見えた。

「あ あれ。実行委員におったやつやんけ。知り合いなん」
「あいつ 隆史 富美江の彼氏やねん」
「へえ~結構真面目そうやなあ。…でも…あれっ」
「うん。富美江じゃない女の子と一緒にいる。何でやろ…」