「夕べは雨だった。野ざらしのお気の毒な姫様方に供えた百合は雨に濡れそぼり、元気がありません」


 庭師はここが肝心と、唇を湿します。


「ですが彼女の百合は濡れた形跡がありません。そして……彼女の足は片方だけ泥に汚れている」


 きっとこれはぬかるみの中、あわてて庭に戻ってきたからなのでしょう、と続けた。