「あ、あたしここでいいよ」
いずみちゃんが曲がり角で足を止めた。
「え?家の前まで送ってくよ」
あたしが言うと、いずみちゃんはあわてたように
「ううん、いいの。じゃあまたね!」
そう言って一直線に駆け出した。
「行こう」
ずっと黙っていた陽斗がすっと歩き出した。
「陽斗・・・」
そっか。
もしかして、自分のお父さんがいる家に近づきたくなかったのかも。
『俺たちは親父の被害者だから』
陽斗の言葉を思い出す。
いずみちゃんも、やっぱり自分のお父さんのこと、恨んでるのかな。
だとしたら、二人は同じ思いで結ばれてることになるのかな。
あたしがとても近寄ることのできない、強い思いで。