「被害者って、どういうこと・・・?」

親子っぽくない『被害者』って言葉にあたしは戸惑った。



陽斗は少し声を荒げると、

「だってそうだろ?あいつが浮気をしたせいで、親は離婚して、俺の母親は死んだ。いずみの家だって、俺の母親が死んでからギクシャクしだして、今も冷たいのままだ」


そしてはっきりと言った。

「あいつは俺といずみの人生をめちゃくちゃにしたんだ」



「陽斗・・・、お父さんのこと、憎んでるの?」

あたしの質問に、陽斗は答えず、ただギュッとあたしの手を強く握った。




「・・・陽斗、辛いこと話してくれて、ありがとうね」

あたしは、小さいことをクヨクヨ気にしてた自分が本当に恥ずかしくて、思わずそう言った。


いずみちゃんと仲が良さそうとか、信じてるけど不安とか。

そんな気持ちより、陽斗の抱えてる過去の苦しさがドッと押し寄せてきて、あたしは圧倒されていた。



陽斗はやっと笑って、

「余計な心配させてごめんな。まあ、そういうわけで、いずみとは何でもないから」

「あ、あたしこそごめん!陽斗に気使わせちゃって・・・」

陽斗は返事をせず、あたしの手を握ってブンブン振った。



でも、ホントはあたしはまだ少し不安だった。


陽斗を見ていたいずみちゃんの目、吸い込まれるように陽斗を見つめていたのは、妹としてだったの・・・?