菜美の言葉をさえぎって、いずみちゃんははっきり言った。


「わたしもごめんなさい」


「え?」

「わたしも同じです。自分のことばかりで、周りが見えてなかった。わたしも人を傷つけてたんですよね、しかも無意識のうちに。わたしの方がたちが悪かったのかもしれません。」

菜美はいずみちゃんの言葉に圧倒されたように目を丸くしていた。


「だからもう気にしないでください。彩香もありがとうね」

急に話を振られてあたしはギョッとした。

「彩香が呼んだんでしょ、菜美さんを」



・・・その通り。


今日カフェに行く前に、こっそり菜美にメールを送ったんだ。

いずみちゃんに会うから、良かったら来てよって。



カフェにいる間は正直、いつ菜美が来るのかドキドキしてたけど、まさかここで待ってたなんて本当に予想外だった。


でも結果的には・・・。



「あなたって・・・、なんていうか本当にすごい」

呆れたように菜美はいずみちゃんにつぶやいた。


「なんかあたし、一気に子どもに戻っちゃった気がする。あたしの17年間はなんだったんだろう?」


菜美の情けない顔に思わず吹き出してしまった。


「あたしもだよ、菜美。いずみちゃんの前では誰でもこうなっちゃうんだから」

「何それ、なんかわたしが歳より老けてるみたいな言い方じゃない?」

むっとしたいずみちゃんの様子がおかしくて、あたしはさらに笑ってしまった。

いずみちゃんがつられて笑い、最後に菜美も、遠慮がちに微笑んだ。


「これ。お詫びのしるしとしては安すぎるんだけど良かったら使って」


菜美がそう言っていずみちゃんに渡した包みに入っていたのは、シュシュだった。


ピンクと薄紫の小花柄のそれはすごくかわいくて、いかにも菜美が気に入りそうなシュシュ。

だけど正直、いずみちゃんのシンプルな服装から見るとちょっと派手すぎる気がした。