「見なさいよ」



姉は二人の妹に言った。



ぱしん、と障子をあけ、父の部屋から見える庭の様子を見せた。 



この異常気象のさなかに、庭中のサボテンが咲いていた。



紅、黄、オレンジ。



きっと母は庭などにかまけている余裕もゆとりもなく、はかなくなってしまったのだ。
 


涙一つ見せなかった母親の、唯一の弱みがそこにあった。



「みんなみんな、咲いているよ……常夏の故郷でも思い出したかな」



持ち主を亡くした庭に、涙と、徒花ばかり咲く。