「そうと決まれば早く帰ろう? コイツも腹空かしてるだろうしな」

そう言って桂木君はバッグのファスナーを閉じ、バッグを肩に担いだ。

私もバッグを左手に持ち、桂木君に続いて保健室を後にした。

「紬は家、どこ?」

と聞かれたので、私がずっと住んでる市の名前を答えた。

「一緒じゃん、俺もだよ。俺は南中だけど、紬は?」

南中は確か県境の川の側で、駅からも近いと思う。

「私は北中…」

私が通っていた中学は、南中とは正反対に市の北の端で、駅までは何キロも離れていてバスに乗らないと通えない。

「ふ〜ん、北と南か…」

桂木君がそう呟くのを聞き、例え住む市が同じでも、桂木君と私には大きな隔たりがあるなと、私は思った。