「あのさ、君は俺の事、知ってるの?」

傷の痛みがなくなった頃、桂木君から聞かれたので、

「うん。だって、桂木君は有名だもん」と答えた。

この学校で桂木君を知らない人は一人もいないと思う。本人にはその自覚がないのだろうか?

「そっか。でも俺は、悪いんだけど君の事は…」

その後に続く「知らない」を言われる前に、私は自分から自己紹介をした。

「知らなくて当然です。私、すごい地味だし、友達なんか一人しかいないし…」

友達が一人なんて、余計な事を言ってしまった。桂木君は引いてしまい、「え、あ…そう?」と言ったきり、言葉に詰まったみたい。