「え? あ、そうですよね? それで、桂木君には…」

「言ってないよ」

「よかった…。あの、桂木君には言わないでほしいんですけど…」

「言わないよ。元々言うつもりないし。あいつはライバルだし、懲らしめてやんないとな」

「え?」

「しまった。つい口が滑っちまった。今の意味、分かった?」

「いいえ」

「全然?」

「全然。片山君と桂木君は何を競ってるんですか?」

「何だと思う?」

「ん…勉強ですか?」

「それ、俺達には有り得ないし」

「そうですか。じゃあ、何だろう…」

「もういいよ。紬ちゃんさ、天然って言われた事ない?」

「ないですけど?」

「そうかなあ。あ、俺ん家こっちだからさ」

交差点に差し掛かった所で、片山君は横の道を指差していた。
市内に住んでるんだ…。近くていいなあ。

「じゃあ、また明日」

「さようなら」

片山君って、いい人だなあと思った。