「大人しく入ってろよ?」

俺は子猫に声を掛けながら、逃げ出さないようにバッグのファスナーを閉めた。

「さあ、早く行こう。バッグ持とうか?」

「え? ううん、大丈夫」

女子は自分のバッグを左手に持ち、俺達は保健室へ行くため、校舎へ逆戻りした。


途中、何人かの知り合いとすれ違い、「どうした?」とか「どこ行くの?」とか聞かれたけど、「忘れ物を取りに戻るとこ」という説明で通した。

その連中が怪訝な目で見る俺の後ろには、俯いて顔を隠すようにして歩く女子の姿があった。