喫茶店を出て、その足で小枝子のアパートへ行った。

階段を上がって小枝子の部屋の前に行き、財布にこっそり入れている鍵を取り出す。

周りに人がいない事を確認すると、素早くドアを開け、中に入いった。


小枝子の部屋は、相変わらずきちんと掃除が行き届いていた。

俺はフローリングの床にドサッとバッグを置き、明かりは着けずに薄暗い中、真っ直ぐ小枝子のベッドへと向かった。

掛け布団の上に横たわり、仰向けになってネクタイを緩める。

小枝子の少し甘い香水の臭いを感じながら、俺は目をつぶった。

昼休みの、明日香との会話が嫌でも蘇る。

『琢磨の事、見るのも嫌そうだったもん』か…

俺はじんわりと溢れ出す涙に驚きつつ、しかしそれを止める事は出来なかった。