俺に背を向け、歩き出した紬の後ろ姿を見ていたら、自転車で背中に感じた紬の感触をもう一度感じたい、という欲求が俺を突き上げた。

夜の暗さは、人を大胆にするのかな…

俺は自転車のスタンドを立て、紬を呼び止めると、走り寄って紬の体を抱き寄せていた。

ああ、この感触だよ。紬の体は柔らかいなあ…

どのくらいの時間、そうしていただろうか。

ふと我に返った俺は、紬の体を離し、すぐに言い訳を考えていた。
パーシーを拾った時みたいに、紬に怒られる前に、何か言い訳を…

今のは挨拶って事にした。いわゆるハグとかいうやつ。

紬は素直というか、人を疑う事を知らないのか、俺の苦しい言い訳を信じてくれたみたいで、怒ってなかった。


紬が家のドアを開けるのを見て、俺は家に向かって自転車を漕ぎ出した。

紬が俺をどう思ってるかは分からないが、嫌われてはいないと思う。もしかすると…

顔が勝手ににやけるのが、自分でも不気味だった。

それにしても股がもうパンパンだ。明日は間違いなく、筋肉痛だろうな。