それにしても、寒くなって来たよなあ。夜になって、急に空気がひんやりしてきた。

紬は寒くないかなあ。俺が「寒くないか?」と聞いたら、「大丈夫だよ」って言ったけど、無理してんじゃねえのか?

ハンドルを握る手がかじかみそうだ。って事は…

片手をハンドルから放して紬の手に触れたら、思った通り、冷たくなっていた。

風に当たらないよう、紬の手を俺のトレーナーの中に入れたら、紬は「暖かい…」と言ったので、俺は少しホッとした。

しかし荷台じゃケツは痛いだろうし、バスに乗せてやるべきだったかなあ。

これで時間短縮にならなかったら、紬にとってはとんだ有難迷惑だよなあ…

そう思った時、一台のバスが俺達を追い抜いて行った。
そのバスが、紬が乗るはずだったバスではない事を、俺は心の中で祈った。