その後、当たり障りのない話をしばらくした後、紬が帰ると言った。

お袋さんが夕飯を食べて行くように勧めたが、「早く帰らないといけないので」と言って、紬はお袋の勧めを断った。

そう言えば、紬はいつも帰りを急いでいるが、なぜなんだろう?

俺は駅まで紬を自転車に乗せる事にした。少しでも時間短縮になると思ったからだ。

後ろに乗った紬に、危ないから俺の腰を掴めと言うと、紬は遠慮がちに俺の腰に手を当てた。

そんなんじゃダメだ。俺の腹の前で手を組むのが一番安全だと思い、紬の子供のように小さくて柔らかい手を掴むと、グイッと俺の腹の前まで引っ張った。

すると、「きゃっ」という紬の声と同時に、俺の背中にフワッというか、ぷにゅっというか、紬の柔らかな体が密着するのを感じた。