桂木君は「おお」と言ったものの、帰ろうとしなかった。私がポカンとしていたら…

「紬が中に入るまで見届けるよ」

と桂木君は言った。

「え、どうして?」

「ちゃんと最後まで送りたいから」

「じゃあ、行くね」

桂木君に背を向け、歩き出そうとしたら、「なあ」と桂木君に呼び止められた。

「パーシーに会いたくなったら、いつでも来いよ」

「うん」

「じゃあな」と桂木君が手を挙げ、私は再び歩きだした。

何歩か歩いた所で、後ろから「紬!」と桂木君に呼ばれた。

振り向くと、自転車から降りた桂木君が私に駆け寄って来て、次の瞬間、私は桂木君に抱きしめられていた。