「もっとしっかり掴まらないと、落っこちるぞ。こうやって…」

桂木君は私の両手を掴み、グイッとお腹の方に引っ張った。

「きゃっ」

そのはずみで、桂木君の背中にぺたっと抱き着く恰好になってしまった。

「あ、悪い。強く引っ張り過ぎた」

「ううん、大丈夫」

私は桂木君の背中から体を離し、桂木君の腰をしっかり掴んだ。

「じゃ、出発するぞ」

「はい」

一瞬だったけど、桂木君の背中は広くて、温かかった。



あっという間に駅に着いてしまった。

「ここからはバスに乗るんだよな?」

「うん」

「バス、すぐ来るといいな?」

「うん。30分以内には来ると思うけど…」

「そんなに待つのか?」

「田舎だから…。タイミングが合えばすぐ乗れるんだけど」

「じゃあさ、このまま家まで送るよ」