母親は少し驚いた表情の後、黙り込んでしまった。



「ママ、どぉしたの?」



少女はその愛嬌のある顔で、心配そうに母親の顔をのぞき込んだ。



「…んーん。大丈夫だよ。
…ただ、ママの昔の思い出を思い出したの」


「そーなの?」


「うん。ねぇ茜、
運命ってなんだろうね。

ママにもぜーん分かんないや」


「えーっ!?
ママにも分かんないことあるんだぁ!」


母親はふっと微笑んだ。


「ママにだって分かんないこと、
いーっぱいあるんだよ?」

「ふーん…

じゃぁ、ママが知らないなら、誰が知ってるの?」


少女が質問したことにはいつでも、
母親は丁寧に説明し、教えてきたのだ。
少女の中で、母親は物知り博士のような存在なのだろう。