「美紗、いい加減にしなさい!遅刻するわよ」
布団の中で丸くなりながら、今日何度目かのお母さんの小言を聞く。
「んー、分かってるよー」
春は温かくて眠い。そう思うのは私だけじゃないはずだ。
肌触りのいい布団はこの前新調したばかりで、いつも眠たい私にとってはとても寝心地が良く、最高の睡眠アイテムだ。

ああ…早く起きなきゃなあ…でも眠いよ。寝たい…あと5分くらい大丈夫だよね…

「みーさ、遅刻するぜ?」
え? 顔の真上で聞こえた声で目を覚ます。
「遥斗!なんでいるの!?」
学校へすぐにでも行ける姿の彼に大声をかけながら、布団から飛び起きる。
そのさえに視界に入った時計では先ほどから30分経ってる事を私に知らした。
ああ、完全に寝過ごした…やってしまったよ
さっきまで彼にあった意識は時計へと注がれ、今ではどう短時間で準備を済ますかに向けられている。
「どうもこうも、お前が遅いんだろ?」
「だったら置いてけばいいのに…」
「ああ?」
幼なじみの遥斗は約束もしていないのに、毎日迎えにくる。
そのおかげで小学校ではラブラブだとちゃかされ、中学では付き合ってるのかと頻繁に聞かれた。
「だーかーら!着替えるから出て行ってよ!」
クローゼットを開け制服を取り出すあたしのよそに、座って雑誌を見だす彼には毎回困る。
いい加減学習力をつけてほしいもんだよ
「別に気にしねーよ」
「私がするの!すぐ行くから下行ってて」
居座ろうとする遥斗を追い出しため息を一つ。
私はこんな朝を毎日繰り返す。

「ほんとごめんねーうちのバカ娘が」