親父はコートを拾い上げる。

「ま、そんなもんだろ。それより、お前さんが千鶴と乳繰り合うと凄くムカつくんだが、それは俺の性格が悪いせいか?」

「どっちにしろ、あんたが千鶴から嫌われてるのは確かだろうな」

「いうねえ」

コートを着て、エレベーターで道場を出て行った。

「後日、通知が来ると思うから、この書面に記入しといて」

洋子から渡された紙に一通り書いた。

これで終わりみたいだ。

面接は本当にないかのようなもので、俺は本部を出ようとする。

入り口付近で子鉄が待っていた。

「なあ、面接は、ないのか?」

「アンタが総長と会う事が面接みたいなもんよ」

「そうかあ」

結果はしっているだろうが、後日通知がくるというのなら、聞く必要はないだろう。

「子鉄は、これからどうするんだ?」

「ちょっと任務があってね、少し遠出」

「じゃあ、ここから離れるのか?」

「ああ、少し、ね」

寂しそうな目が切なさを思わせた。

「成功する事を願ってるぜ」

「え?サバイバーでおごり?」

「帰ったらな」

俺は子鉄の背中を見送った。

何故、今の時期になって遠征なのか。

どこかしらで問題でも起こっているのか。

考えながらも一人、家の方角へと向う。