鼻血を拭いて、立ち直る。

「ふう」

息を吐いて、落ち着かせる。

焦る必要は、どこにもない。

もう一度構える。

親父だから焦ったって事か?

全く、何も学んじゃいないな。

冷静に、親父を見据える。

能力は使わない。

相手は人間。

能力も武器もない。

「来い」

能力は使わない。

退魔師は人間がなるべきものだ。

だから、人間らしく、肉体だけで凌ぎきる。

親父は口元を釣り上げ、笑う。

そして、動いた。

低く間合いに入り込み、拳を打ち上げようとする。

しかし、それは本来の目的を隠すためのフェイントだ。

親父はすでに俺の足を踏んで、動けなくしている。

それを読んでいた俺は首を動かして、最小限の動きでよける。

そして、頭突きを親父の頭にぶつける。

「終了!」

そこで、終わった。

「いってえ!どんな石頭してんだよ!」

「全く、惰弱な奴だなあ」

親父は怯む事無く、最初のように首を動かして駆動を確かめた。