「洋子、後何分だ?」

「二分」

「そうかい」

親父がコートを脱いだ。

コートに重りが入っているとかは、なさそうだ。

「さて、と」

「何をするつもりだ?」

「ゲ・ン・コ・ツ」

拳に息を吐いて、準備を行う。

飛び出すように、前へ踏み出した。

俺はカウンターを狙うためにタイミングを見計らう。

そして、親父が間合いに入り、拳を放つ。

俺もクロスカウンターで拳を放つが、親父が放った拳を止める。

そして、下から拳を出して俺の拳を弾き、手薄にする。

最後に、止まっていた拳を力強く打ち出した。

回避できるわけもなく、再び顔面にめり込む。

後ろに吹っ飛ぶが、意識は保たれている。

戦いの中で、多少なりとも打たれ強くはなっている。

何とか着地成功し、地面に膝を付いた。

「はあ、はあ」

鼻血が垂れ流しになり、畳へと落ちていく。

息が詰まる。

親父は一瞬に内に距離を縮め、立ち上がる隙を与えない。

胴回し蹴りで俺の頭を狙ってくる。

「うお!」

俺は横転しながら立ち上がり、残心の形を取った。

「お前さん、しぶといなあ」

完全に俺の息が上がっている。