「じゃあ、三分、はじめ!」

俺と親父の戦いの幕は切って下ろされた。

開始そうそう、親父が動く。

打ち放たれた右拳の速さが尋常じゃない。

何とかかわし、回転裏拳を与えようとする。

しかし、上半身を後方に曲げて、回避した。

異常な体の柔らかさがある。

そして、親父の右ストレートが顔面にめり込んだ。

足で踏ん張り、耐える。

俺は伸ばした片腕を掴んで、一本背負いへと持ち込む。

親父は自ら飛び、こちらの技のタイミングをずらす。

そして、地面に両足をついて、親父も踏ん張る。

タイミングをずらされたとはいえ、全体重をかけているというのにすごい足腰をもっている。

押して駄目なら、技を変えるしかない。

俺は腕を決めにかかる。

「ほう」

体勢を変えようとしたタイミングを見計らって、親父が上半身を起こす。

見事に体勢を崩され、腕を外される。

本当に、人か?というほどの腕力を備えている。

俺は一時、間合いを開く。

「はあ、はあ、ち、強いな」

「男と絡む趣味はないんでなあ」

歳の差なんてものともしない。

これが、素質を持った人間か。

そりゃ鉄球を食らっても、普通に立ち上がるわな。