能力を使えばなんとかなるが、そんな事をするわけにもいかない。

カンニングなんてやるべき事じゃないんだ。

必死になりながらも時間が過ぎていき、終了した。

最低六割程度だろうか。

「はい、終了」

「ふう」

鉛筆を置いて、俺は肩を揉む。

「じゃあ、次は模擬戦ね」

「ああ」

「模擬戦といっても、退魔師の人間と闘ってもらうから」

「誰だい?」

「強い人よ」

いやな予感しかしてこない。

俺と子鉄がプリントを持って部屋を出る。

まだ、萌黄さんは忙しそうに作業をしている。

「私は答え合わせをするから、アンタはこの人に付いていって」

部屋の中にいたのは、スーツ姿の洋子だった。

「新人になるかもしれないってのは、お前か」

「葉桜蛍の恋人」

「お前、いいとこあるじゃないか」

痛いほどに俺の肩を叩く。

「こっちだ、ついてきな」

俺は洋子に連れられて、十階にエレベーターで降りる。

十階はまるごと道場として改造されているようだ。

「お前が闘うのはあいつさ」

見た事ある。

というか、俺の親父じゃないか。

「いやあ、まさか、自分から志願してくるなんて、本当、珍しい事もあるもんだね」

正装ではなく、いつものコート姿の親父が耳をほじりながら座っていた。