俺はしばらく頭を下げたまま、静止していた。

「兄さん、顔を上げて」

不意に、千鶴が俺の頬にキスをする。

「え?」

「誰だって不意にやられたら驚く。確認されても、困るけれど」

自分のした事で真っ赤になりながらも、笑顔を作る。

「兄さんは、兄妹としてのスキンシップの一環としてやったんだよね?」

「あ、ああ」

「もう、いいよ。私も、兄さんを置いてけぼりにしちゃったし」

再び、料理を作り始めた。

「ああ」

いまだに罪悪感を感じてしまう。

後ろから視線を感じるので振り返ると、ロベリアが見ていた。

視線が女の物になっている。

以前から、ロベリアが俺を見る目が変ったんだよな。

ロベリアには気に入られているというのは、解るんだけどな。

どうすべきか。

とりあえず、台所にいても邪魔になるだろうと思い、出て行く事にした。

「どうした、ロベリア」

ロベリアが何を考えているのか、何となく解っているが聞いてみる。

ロベリアは俺を二階へと引っ張っていき、俺の部屋の中に押し込んだ。

同時に、ロベリアも中へと入る。

「王子様の宝物は、兄として、王子様を見ていません」

「何?」

しかし、ロベリアの口から出たのは、驚くべき事態であった。

「王子様の記憶がないから、兄として見ようとしても見れないんだと思います。ずっと気になってた人となると、その好意は一人の男性という物なのです」

「そうか」

ロベリアの言う事は何となく理解が出来る。