家に帰ると、千鶴の靴があった。

「良かった」

帰ってるみたいだ。

ロベリアの靴もある。

「王子様」

ワンピのロベリアが奥から笑顔を見せる。

「ただいま」

「おかえりなさい」

ブロンド美人が出迎えてくれる日が来るとは思いもしなかった。

日本語が流暢なのは、研究所にいたからかもしれない。

「千鶴は?」

「料理、作ってます。でも、様子が変なんです」

「理由は解ってる。だから、心配しなていいからな」

「はい、王子様」

料理を作ってるという事は台所か。

後々に回すと厄介だ、今すぐ謝りに行こう。

「千鶴」

台所に顔を出すと、料理を作る小さな背中が見えた。

千鶴は皆よりも小さい。

そこがとても可愛らしくもあるんだが、本人にすればもう少し身長が欲しかったみたいだ。

しかし、こちらを向いてくれない。

恥ずかしいのか、怒っているのか。

「今日は、悪かった」

俺は土下座をして、床に頭をこすりつける。

千鶴は振り返り、俺を見下ろしている。

「もう、あんなふざけた真似はしない!兄として、軽率な行為だった!」