「瑠璃子はどうした?」

「あの子、負けん気だけは強くてタフなのよ」

「受けた傷は、同じ物なんだろ」

「その点に関して、一層、妖魔に対しての抵抗が強くなってるわ」

「そりゃ、瑠璃子の前には出られないな」

「今は無理矢理にでも療養させてる」

瑠璃子が動けば、さすがに不味いな。

街中の妖魔を血祭りにあげかねない。

「丞、だっけ?」

「ん?」

「アンタの中の過去の私は、どうだった?」

「今と変わりない。とても強くて、とても優しくて、素敵な人だよ」

「そう」

表情は変わらない。

そういえば、過去に謎の男が子鉄に手痛い傷を負わせたんだったな。

湊さん、一連の流れを読んでいたのか?

まさか、こんなところまで読めるはずは、ないよな。

「じゃあ、俺は行くよ」

「たまには、アンタの家に寄らせてもらうわ」

「ああ、千鶴が喜ぶよ」

距離が戻ることも、近づく事もない。

ただ、お互いの事を知っている知り合いという関係になった。

俺は退魔師から攻撃される事はなくなったという事か。

「ふう、しかし、どうするかな」

これからの事を考える。

戦や話し合いまでは時間があるわけだ。

自分の家にいるにしろ、ただ飯食らいはまずい。

クルトでさえ、妖魔の里で働いてるんだからな。

「就活、するか」

現実問題は、そこにある。

ロベリア達だけに重荷を負わせるわけにはいかん。

旅人だから旅をしてればいいじゃんっていうわけにもいかん。

真面目に、行かなければな。