周囲には、人影が多数ある。

俺を抱えていた、吟が倒れた。

「吟、く、そ」

動こうとしても、体が動かない。

吟が転移術を安易に使わなかった理由は目の前の事実にある。

「丞ちゃん!」

「龍、姫」

傍には、軽装の龍姫が立っている。

「姫ちゃんじゃ!今から、そなたを治療する!」

素早く魔法陣を描き、紅玉が俺を魔法陣の上へと動かした。

傷口が治っていくようだ。

「俺は、これくらいでいい。それよりも、吟を」

「まだ駄目じゃ」

しばらくは俺の治療を取り掛かった。

途中、自動で回復するように仕込まれていたらしく、龍姫は吟の様子を伺いに向った。

ある程度直ったところで、コアをロベリアの体の中に戻す。

「よし」

俺も立ち上がり軽めに身体を動かす。

「完璧だな」

吟の様子を伺うと、眠っているようだ。

「吟は、どうなんだ?」

龍姫は渋めな顔で、俺の顔を見た。

「転移術は高等技術の一つ。吟の年齢と素質的な部分を考えると、相当無茶といってもいいのじゃ」

「じゃあ」

「回復はするが、しばらくは動けぬじゃろう」

飛び込む前に立っていたのは、本当に危険状態だったのだろう。