先に葵が浴槽に入る。

薄暗いした室内は広々としていた。


カチャリと音がして文之がそっと入って来た。


葵はわざと見ないフリをした。


言い様のない緊張が葵を襲う。


根は小心者なくせに時に大胆なこの性格に葵自身戸惑うことがよくある。


ザザーと浴槽内の湯が外に出ていく。

と同時に文之の体が葵のすぐ後ろにあった。

(どうしよう・・。こんな時何を話せばいいのだろう…?)


葵のそんな心配をよそに文之はケラケラと笑い出した。


「お湯が物凄い勢いで出て行っちゃったねぇ~。デブはこれだから困るわぁ~。」


いつもの文之だ。

冗談混じりのそのしゃべり方。

「恥ずかしいから先に出ようかなぁ~。」

文之はそう言うとバスルームを後にした。