「新鮮な魚が食べたくて。葵ちゃんに付き合ってもらいたいんだ」
文ちゃん、

いや、文之は葵にそう告げた。

「ダメかな?」

このあいだ会った印象とは違い、落ち着いた声で文之は葵の目を伺う。

「ゴハンだけなら・・。大丈夫です。」

「良かった。
じゃあ明後日北野まで迎えに行くから」

半分勢いだった。何事も慎重だった自分から卒業するのもいいことだと自分に言い聞かせていた。

夜の世界への第一歩もこの勢いのお陰だと言っても過言ではない。