あっけなく水曜日の夜は過ぎて行った。

その夜葵は夢を見た。

阿部と二人で川のほとりを歩いている。
二人はとても幸せそうだった。
数歩先を行く葵の後をゆっくりと安部が続いて歩く。
葵が振り返ると阿倍が優しく微笑んでいる。
葵は優しい気持ちでいっぱいになる。


春風は心地よく葵の頬を撫でる。
大好きなスイセンの香りは小さい頃、母がよくつけていた香水と似ていた。

「あーちゃん」甘えたその声で振り返ると…

そこに阿倍の姿はもうなかった。