妄想はやがて出口のない被害妄想へと膨らんでいく。

「どうかした?」阿部の一言に葵ははっと我に返った。

「ううん、あまりに美味しくて頭がぼーっとしちゃっただけ。」

阿部の顔はいつも以上に穏やかだった。

阿部へ不信感を抱いたことを恥ずかしく感じた。

この人は何もない。
この人は特別だ。
この人は私の味方だ。

葵の完全なる妄想はここから始まっていたのだ。