人が人の気持ちを大きく動かす。
ママはきっと、「こっちの世界に来なさい」と言っているのであろう。
いや、それほど大袈裟なことではないのかもしれない。

自分が必要とされている優越感。
伴わない自信。
味わったことのない思いが葵をいっぱいにした。

結局、丸一日中頭の中はそのことばかりだった。

もしもう一度あの店の扉を開けたのならもう二度と逃げることは出来ない気がした。

葵は決断を下せずにいた。

毛布にくるまる葵は嘆いていた。

キュルキュルと鳴る下腹部に手をやる。

こんな時にも私はお腹が減るんだ。

そういえば昨日の夜から何も口にしていない。
図々しいとさえ感じるこの空腹感は今のこの状況の答えなのだろうか。