自分には縁のない世界だったと痛感していた葵だったが、その思いは何とも容易く打ち破られた。

静かに眠る葵を何かが邪魔をした。

しつこく鳴り続ける携帯電話がある。

鳴りやまないその物体は相当に葵に用事があるようだ。

「もしもし」

自分で思うよりもきちんとした声が出せたように感じた。

「もしもし?葵ちゃん?ミキよ。昨日はお疲れさま。」

葵は電話に出たこと、声を発したことを酷く後悔した。


「お疲れさまです。こちらこそありがとうございました。」