(じゃあ毎日お店に来てね。)と言いたいところだったが、葵には言えなかった。


そして静かに阿部の車を降りた葵はそそくさとマンションに入っていった。

仕事の後のこの感覚はあの頃と少しも変わっていない。

私の人生はどうやらあの夜から変わってしまったのだろうか。

真冬の風の中を全力で走ったあの夜から。

もう二度とママの顔を見ることはないのだろうと感じていたあの夜から。

ひろしの声があんなにも愛しく感じたあの夜から。


それとも文之と出逢った時から?