「悪いんだけど、今見ての通り忙しいの。

研修で出てるマニュアルでも読んでてもらえる?」


藤木はニコリともせず、葵を見ようともせずパソコンに向かう。


「はい。分かりました…。」



葵はすっかり力を落とし席に戻った。


思わず辺りを見渡す葵。

中年の男性社員達が、それぞれ気だるそうにパソコンに向かっている。


ブツブツと独り言を繰り返す者。


クチャクチャとガムを噛み、しけた顔を浮かべる者。


鳴りやまない電話。


しかし誰も取ろうとはしない。