まだ飲むのっ!?
シャンパン1本空けて…ワインも1本空けて……どんだけ酒乱なのさ(汗)
ボーイはそのワインボトルを丁寧に開け、私と祐輔のグラスにそそいだ・・・
「じゃ、とりあえず乾杯〜」
グラスを私に近づける祐輔。
私もグラスを持ち、祐輔のグラスにカチンと当てた。
グラスに入ったワインを一口飲んでみる。
……おいしいっ
「飲みやすいね♪ちょっと甘い感じっ」
「…だろうな(笑)」
「え……?」
「このワイン。お前が生まれた日に作られたワインなんだ…」
「――――!!」
私が‥生まれた日!!?
グラスを置き、ワインボトルをみてみると…ラベルに書かれた製造日は、確かに私の生年月日と一緒だった・・
「飲みやすくて…甘い・・まさにお前って感じのワインだろ?(笑)」
「祐輔……これって・・?」
「それ・・・プレゼント。」
祐輔が私の目の前を指差す。
.
目の前に目を移すと…白い小さな箱が置かれていた・・
いつの間に…?
さっきまでなかったのに・・
私はドキドキしながら、その小さな箱を丁寧に開けた…
「・・・・・」
パカ……
「…………ぁ!これ‥」
箱に入っていたのは…
シンプルなシルバーの指輪だった。
「祐輔…これ・・」
「貸して…はめてやる‥」
祐輔は席を立ち、私の横に来て左手の薬指に指輪をはめてくれる。
前に祐輔からもらった指輪を、いつも左手の薬指につけている私。だから左手の薬指には、2つの指輪がはめられた…
「…ハハ。お前の指は、指輪だらけだな・・・」
「…………グスッ」
涙が溢れてくる・・・
祐輔の言いたいこと、今日ここへ来た意味がわかった…
「でも…今回は、俺も指輪もあるんだ〜♪」
「―――!」
祐輔は自分の左手を私に見せた。
薬指には、私が今もらった指輪と同じものをはめていた…
.
「ぅう……ヒックっ・・」
もっと溢れ出す涙・・
祐輔は笑いながら泣いている私を抱きしめた・・
そして………
「結婚しよう・・・」
低いハスキーな声…
私の大好きな声でそう言った…
私は泣きながら小さな声で、
「はい…」
そう、ぽつりとつぶやいた。
.
【希side】
ブォオオン……
祐輔の車に揺られる私。
今日は助手席ではなく、後部座席に座っている。
なぜかというと・・
「なんでお前までついてくんだよっ」
「いいじゃ〜ん♪俺だって、久しぶりに祐輔のばあちゃんに会いたいよッッ」
祐輔が嫌そうな顔をした。
助手席には、修二くんが座ってタバコを吸っている。
祐輔のプロポーズを受けてから、一週間後‥
今日は祐輔のおばあちゃんに挨拶に来のだ。
「あ〜ぁ…真由も来れればなぁ〜」
「仕方ねぇだろ。真由ちゃん仕事なんだから・・」
「まあな〜。でも、真由にも祐輔のばあちゃんが作った“おはぎ”食べさせたかったよ!」
「…お前好きだね(汗)俺のばあちゃんが作ったおはぎ・・」
「超うまいじゃんっ♪粒あん・こしあん・きなこ・ごま…全部うまいよな!今日作ってくれるって〜?」
「ああ…昨日から張り切ってたみたいだよ(笑)」
「マジで!!?ああ〜腹減ってきたぁぁ〜」
二人の会話に、私はクスクスと笑った。
.
「…つーか、俺と希は別にばあちゃんちに遊びに行く訳じゃねぇぞ!?結婚するから、挨拶に行くんだ!だからお前は邪魔なんだよっ」
“結婚”・・・
その言葉にちょっとドキドキする…
「いいじゃねぇかよ〜お前のばあちゃんは、俺のばあちゃんみたいなもんなんだから…それに俺も二人の結婚の門出を祝たいしなっ」
「………ったく(汗)」
私は、二人の会話にまたクスクスと笑った。
祐輔のおばあちゃんて、どんな人だろう……
ちょっと緊張するな・・
……………
………
30分後。
祐輔の車は小さいけれどおしゃれで、きれいな一軒家の駐車場へ入った。
ここが祐輔のおばあちゃんち?かわいいお家…
お庭も小さいけど、花がたくさん置いてある・・
「あ!おばあちゃん♪」
―――!
車から降りてきた修二くんが、お庭の中に入っていった。
.
私も車から降りお庭を覗くと…優しそうなおばあちゃんが、花に水をあげていた・・
…あれが・・祐輔のおばあちゃん??
「あ〜ら修二くん!ちょっと見ないうちに、また男前になったか?」
「わかる??」
修二くんとおばあちゃんが笑いあう。
「ばあちゃん(汗)家ん中で待ってろつっただろ?まだ寒いし、また腰痛めるぞ??」
車のキーを閉めながら、祐輔がおばあちゃんに言った。
「な〜に、ばあちゃんだってまだまだ…あら!あなたが希さん!?」
―――!
すると、おばあちゃんが私に気づき、近づいてきた。
「あ…は、はじめまして!私、希です・・よよ、よろしくお願いします!!」
おばあちゃんに頭を下げる。
カミカミだな私……(汗)カッコわる〜〜///
「あははは〜元気な娘さんだ♪さぁさ、みんな家に入りなさい。ご飯の用意できてるよ!」
おばあちゃんがそう言うと、私たちは家に上がった。
.
部屋の中もなんかかわいい〜♪
花がいっぱい飾ってある〜
おばあちゃん、花が好きなんだ…
「ほらっ…食べなさい!今日は、祐輔の好きなものばっかだよ♪」
リビングに案内してくれたおばあちゃん。
リビングのテーブルには、数々の料理が用意されていた…
うわぁ‥まるでパーティーだなぁ〜
中央には、噂のおはぎもあるし♪どれも美味しそう!
お昼を済ませていなかった私たちは、すぐにその数々の料理をほおばった…
おばあちゃんはすごく嬉しそうだった・・・
…………
………
「あ〜うまかった!やっぱり、ばあちゃんのおはぎはうめぇな♪」
修二くんがお腹をさする。
「そうかそうか♪いっぱい作ったから、今日持って帰るといいよ〜」
「マジ!?嬉し〜真由に食べさせられるぜっ」
食後のお茶をいただきながら、修二くんとおばあちゃんの会話を聞く私。
.
修二くん…よっぽどこのおはぎが好きなんだ〜
でも、確かに美味しいおはぎだったな♪
「あのう…お手洗いは?」
私はお茶を置き、立ち上がる。
「ああ〜それながら廊下出て右だよ!」
「ありがとうございます」
私はリビングから出て、トイレを済ませた。
トイレを済ませ手を洗い、リビングに戻ろうとした時…
ん・・・?
トイレの向かいの部屋が開いている。
チラッと部屋を覗くと…そこには、立派な仏壇が飾られていた。
この部屋は和室なんだ・・
畳のいい匂いがする……
「トイレは終わったかね?」
「―――!」
すると、祐輔のおばあちゃんがやって来る。
「あ、スミマセンっ!勝手に部屋覗いちゃって…(汗)」
「アハハ、いいんだよ〜お父さんたちに、お線香あげていっておくれ・・」
お父さん…たち?
おばあちゃんはその和室に入り、仏壇の前へ座った。
私も和室へ入り、おばあちゃんの隣に正座して座った。
.
仏壇には…若い男の人と女の人。そして・・30代くらいの男の人の写真が飾られていた。
「これが私の夫。急な病でね…35歳の時に亡くなったんだよ・・」
―――!
「…そうだったんですか」
「そして、この夫婦は祐輔の父親と母親だ…母親の方が私の娘。祐輔が3才の時、2人とも交通事故に遭ってね・・」
「―――・・」
おばあちゃんは、写真をじっと見つめて言った。
「私はひとりしか子供を授からなかったから…娘夫婦が死んで、夫も死んで・・祐輔と二人きりになっちまった。祐輔には、寂しい想いばかりさせてしまったね…」
祐輔から…お父さんお母さんが、幼い時事故に遭って亡くなったことは聞いていた私。
それ以来、おばあちゃんに育てられたことも・・
改めて聞くその話に…少し心が痛んだ・・・
「…あの子・・祐輔には、本当苦労かけっぱなしだよ…親がいないから・・ばあちゃんにずっと育てられてて、おまけにばあちゃんの借金背負って…申し訳ないばかりだね・・」
「…おばあちゃん・・」
私はおばあちゃんの背中を、優しくさすった・・
「本当ならばあちゃんは恨まれてもおかしくないのに…祐輔は毎月大金を仕送りしてくれるんだよ・・おかげで、こんないい暮らしできて……私は本当に幸せ者だねぇ・・」
なんだか、祐輔のおばあちゃんへ対する想いが伝わる・・
.