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家にいたら母親に小言を言われそうで、



夕方まで暇だったからだけの話。



ただそれだけの話。



本屋か、図書館か、好きな喫茶店でのんびりしても良かったのに。



なのにどうして、また此処へ来てしまったのだろう。






花咲文具店は、日曜日だというのに、予想通り客足は少なく、閑古鳥が鳴いていた。



暫く離れた場所から見ていたけれど、らちがあかないので、店の前まで近づいてみたのだ。




「あー!あなた!」




不意に声をかけられて、びくんと体を揺らす。

ギギギ…と音が出そうなほどゆっくり顔を横に向けると、可愛らしいボブヘアの女の人が立っていた。




「バイトの面接したい方ですか!?」



「へ?」



「だってさっきから表でお店の方を見てたでしょ?」



「へ!?」




なんで知ってんの!この人!



確かにお店を近くから見ていたけど、レジや店内から見えるような場所には立っていなかった。




「私、このお店で働いてるサエって言うの」




私が固まっているのをよそに、サエと名乗る女性は嬉しそうに私の手を握った。



な…なんか…厄介な人に絡まれた気がする…



じりじりと私が後ずさった分だけ、サエもズズイと近寄ってくる。



気迫がめっちゃ怖い




「あの、すみません。私 バイトに来たわけじゃ」



「とにかく、ツクモさん呼んでくるね。此処で待ってて!話は後で聞くから」





良かった


いまのうちに逃げよう


サエさんには悪いけど、私は此処で働く気なんて全然ないのだ



と、手を離されて安心したのも束の間


サエさんは振り返って、私にニコッと笑いかけた。




「…逃げちゃダメだからね☆」





みっ…


見透かされてたぁぁああ!!




店の奥へと踵を返すサエさん。


彼女の姿が棚の影で見えなくなるや否や、私は全力で店から離れた。



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