けれど、それを追いかけるように、目をつむったまま動かない彼女の姿も浮かんできた。


1年前の悪夢と一緒に。


慌てて頭の中を真っ白にする。


それでもみんなの会話は容赦なく耳に入ってきた。


「あいつ、あっちでもバスケやってそう!」


「あと絶対ドッグカフェで働いてる!」


「あいつ、いつもニコニコしてるから絶対人気あるよ」


立ち上がって会話を止めたいぐらい、ギリギリのところまで来ていた。


久しぶりに聞いたアイチを思い出させる数々のキーワード。


「バスケ」とか「ドッグカフェ」とか、そんなささいな単語に彼女の面影はこんなにも大きくくっついてくる。


そして、そこにはしつこく1年前の悪夢も一緒だ。


今、頭の中に薄くチラチラと浮かんでいる数々の映像は思い出そうとすれば、すぐにでも濃くすることができる。


あたしはそれをただひたすら真っ白にすることに集中していた。


唇を噛み締めて涙を我慢した。


我慢したけれど、自分の中にあるいろんな思いは次々に溢れ出してくる。


泣きたくない。


だって、アイチを安心させてあげたい。


あたしはまだまだ情けない。