そこで初めて、ここは天国でもなく、あたしは死んでもいないと言うことに気付いた。


何だかもう時間がないような焦りに襲われる。



アイチはあたしの隣に座ったまま、まっすぐ前を見て言った。


「ねぇ、真海子。あたしはもう真海子のこと、守ってあげられない。たとえ真海子が自分を犠牲にしても、それを何とかしてあげることすらできない」


アイチは悲しそうな表情を浮かべて続けた。


「ねぇ、真海子。あたしの生き方は正解じゃないよ。悲しいことだけど、そっちの世界では誰かを犠牲にしないと、自分が生きていけないのかもしれない。そう言う場面が来たら、時にそれに従うことも必要だよ」


彼女の目が不自然な動きをしていた。


自分の考えと違うことを無理に言っていることがすぐにわかる。


あたしの幸せを願うために、アイチは大っ嫌いだった生き方を語っている。


それに、あたしなりの答えを言おうとした時だった。



突然、耳元で規則的な機械音が聞こえてきた。


あたしを呼ぶみんなの声がする。


今、見えている世界が少しずつ薄れて行くのがわかった。


「待って、アイチ!まだ話は終わってない!」


「天国で待ってるから。だから精一杯生きてきてよ。約束」


「ねぇ、何かあったら絶対呼んでよ!?あたしだってアイチを守りたい!」