「最後に教えておいてやろう。お前は1つ勘違いをしているぞ」


男の声が降って来る。


あたしは上を向くこともできず、ただその続きを聞いた。


「おれは一言も愛生の母親に何かするとは言っていない」


「え…?」


そこで初めて上を向くと、男は笑いを堪えきれないと言った様子で、その真実を告げた。


「おれが何かすると言ったのは、お前を中心とする愛生の周りの人間だ」


世界が大きくグラリと揺れた。


目の前の光景がうまく視界に入ってこない。


男の声は続けた。


「おれは愛生に言ったんだ。『お前が死ななかったら、周りの奴らがどうなるか覚えとけ』と。最初はあいつも生意気なこと言って反抗してたよ。でも、実際にお前のマンションにビラを貼って、それを報告してやったらすぐ言った。『誕生日までには死ぬから、もう誰も傷付けないでくれ』って」


ねぇ、待って。


この男の言葉を、頭が全然飲み込んでいかない。


「もう許してやるって言ったんじゃないの!?3つの約束守れば」


「3つの約束?何だ、それは」


男は笑いを消すと、続けた。