午後6時ちょっと前。
あたしが斎場に戻ると、すでにみんなは親族席に座っていた。
「真海子!」
通夜が始まるギリギリに戻ってきたあたしに、みんなが心配そうな顔で駆け寄ってくる。
「どこ行ってたんだよ」
「心配させんなよ」
「電話したんだぜ?」
「来ないかと思って心配しちゃった」
みんなに口々にそう言われて、あたしはこれ以上心配をかけないように微笑んで言った。
「ごめんね。家に数珠忘れちゃって」
それから、アイチの祭壇に1番近い席に座る。
アイチの親族はお母さんしかいなかった。
他の席にはあたしたち幼なじみの両親や兄弟、それに千津ちゃんや修介が座る。
そしてあの男も親族席に座っていた。
本当は今すぐこの場から出て行ってもらいたい。
1秒でも同じ空気を吸っていたくない。
けれど、あたしには作戦がある。
あたしはただ黙って、アイチの遺影に目をやっていた。