しばらくしたある日のことだ。

千歳が、一人でどこかに行ってしまった。

夏は、溜め息をついた。

「もう…どこ行ってしもうたん…」

最近は、島の仕事をするようになったが、今日は休みのはずだ。

すると、扉が開いた。

「あ、千歳!どこ行っとったん?心配したんよ…?」

そう言った時、千歳がいきなり口づけをした。

「夏」

名前を呼ぶと、懐から黒い立派な箱を取り出した。

「何、これ?」

夏は、首を傾げてから箱を開けた。

そこには、美しい真っ赤な櫛。

金箔で、鳳凰(ほうおう)が描かれていた。

「どないしたん!?これ…」

びっくりして、夏は千歳を見つめた。