何十年か前のことだ。

千歳(ちとせ)という侍がいた。

千歳は刀の腕がよく、五郎丸(ごろうまる)という侍に嫌われていた。

五郎丸は、彼を殺そうと考えた。

千歳に勝てない侍たちは、五郎丸に賛成して千歳の命を狙った。

だが、千歳は同じ仲間であった侍を殺せずに逃げた。

そしてやっと流れついたのが、百合子の祖母がいた島だった。

千歳は、五日食事をしていなかったらしく、空腹で倒れた。

そんな彼を拾ったのが、百合子の母が生まれる前にいた、姉の夏(なつ)だった。

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

夏は、細い体で千歳を家まで運んできた。

百合子の祖母…美代は、そんな夏を見て驚いた。