翌日、美代が帰って来ると千歳は頭を下げていた。

「島民が死んだのは…俺のっ…せい…なんですっ…俺が、この島に…いたからっ!!いや、違う…俺が、…釣りに行ったりしなければ…っ!!」

泣きながら地面に顔をつけて謝る千歳を見て、美代は優しく頭を撫でた。

「アンタは悪ない…。大丈夫や。アンタは、悪ない…。ん?」

美代は、夏の手の中にある赤い櫛と、弟の胸に乗っている貝殻を見た。

「あ、頂いたお金で買ってきたんです…」

美代は、その赤い櫛を見つめて悲しげに微笑んだ。

「ずっと握っとったんやね。この子の貝殻は、長生きできるようにか?」

千歳は、コクンと頷き、着物を差し出した。