その貝は、何万年も生きると言われる貝で、この島でしかとれない。

「お前が、長生きできるようにだ。この貝持ってろ」

そして、千歳は周りを見渡した。

美代がいない。

「美代さんは?」

「お母さん、弟の薬を買いに他の島に行ったんよ。帰りは明後日くらいやなぁ」

夏は、千歳を見つめた。

もう一つ、何か持っている。

「子供用の、着物?うわぁ、可愛い!」

その着物は、水色の美しい桜が描かれた着物だった。

もう一つは、深緑の着物。

「男か女か分からなかったから、二つ買ってきた」

そんな千歳は、まるで、子どもが生まれるのを楽しみにしている父親のように見える。

「あ、もう魚があらへん!もう少しあるけど…」