「仕事で貰った金。…美代さんに食事代って払ったら、その金で好きな物を買えって言われた」

千歳は、少し赤くなって言った。

「ほんまに…嬉しい!でも、千歳。アンタは?自分のもの、買わんでえぇの?」

夏が言うと、千歳がクスッと笑った。

夏は、その笑顔にドキッとしてしまう。

「いいんだよ、俺は。夏の喜ぶ顔が、俺の好きなものだ」

夏は、今度こそ耳まで真っ赤にした。

熱くなった頬を抑えて、千歳を見つめた。

「お前によく似合う」

千歳は微笑み、立ち上がった。

弟の方へ行くと、弟は千歳にニコッと笑ってみせた。

「ほら、これはお前にだ」

千歳が差し出したのは、銀色の貝殻。

「これ…」