「あ、杏樹様!」
岡本さんの声を背に、広いお屋敷内を走る。
下品だとか考えずに、バタバタと足音を立てて、エスカレーターを登った。
ウソだよね?
ドッキリとかだよね、絶対。
息も切れ、呼吸も崩れているというのに、陸に会いたくてたまらない。
そして。
――バンッ!
お屋敷の2階の奥、陸の自室の入り口のドアを開ける。
レースのカーテンだけが引かれた部屋の中は、薄暗くって。
ほとんど何も見えない。
「電気!」
部屋に入ってすぐのところにある照明のスイッチを押した。
――パッ……
すぐに視界が明るくなる。
そこで、あたしが見たモノは……。
「餓鬼!?」
大きなキングサイズのベッドに、寝ている陸と。
そのまわりに、うじゃうじゃと群がる……餓鬼だった。
餓鬼というのは、体は人間の飢餓状態と同じく、手足はやせ細り、腹部だけが異様に膨らんでいて。
死者になったものが、次の死者を呼びに来るとされている。
身長は繭ちゃんよりも小さい。
50センチあるかないかだ。
――ドサッ
その場に、持っていたバックなどの荷物を落とす。